時間に依存する伝播関数


   これまでの考察を、時間に依存する伝播関数(rj,ri,tjti)に拡張する。ここで、tjtiと記述したのは、散乱が時間に依存しない場合、伝播関数は時間の差のみに依存することによる。
 

 0(rj,ri,tjti)を、時間tiriにあった粒子が散乱を受けずに、時間tjriに達する確率とする。このような、散乱を受けない運動の伝播関数を自由伝播関数という。また、P(A)を散乱点と粒子の相互作用を表すものとし、考察を単純化するため、この相互作用は散乱点に粒子が達すると瞬時に生じるものとする。
 

 まず、伝播関数が時間依存する場合に、数式と記号(ダイアグラム)の変換表を拡張させると表1.2のようになる。なお、ダイアグラムを描く際には、y方向を時間が増加する方向にとることとする。

QUANTMUFIELD-1-4.1.2IM.PNG - 18,772BYTES

 そして、これを用いてダイアグラムを描くと次のようになる。

QUANTMUFIELD-1-4.S1.8IM.PNG - 55,415BYTES

 ここで、散乱点Aで散乱が起こる時間tAという時間は、t1t2の間のある瞬間であり、決められていないことに注意しなければならない。例えば、時間t1r1にあった粒子が、散乱点Aで1回散乱を受け、時間t2r1にある確率を計算するには、t1t2の間のすべての時間tAで散乱が起こる確率を重ね合わせなければならない。(式(1.9))

 

 

 

                     P((r1, t1)→A→(r2,t2))=        INTEGERT1T2.PNG - 1,461BYTES  dtA0(rA,r1tAt1)(A)0(r2,rAt2tA)                   (1.9)

 

 

 

 

従って、(1.8)を数式で表すと、次のようになる。

QUANTMUFIELD-1-4.S1.10IM.PNG - 8,007BYTES

このように記述すると多重積分がたくさん現れ、計算が困難なように思われるが、フーリエ―変換を用いることにより、簡単な積に置き換えることができる。
 0(rj,rtjti)をフーリエ―変換を用いて表すには、

 

                           (rj,rtjti )=0   (tj   ti)                    (1.11)

 

を伝播関数の定義として加えと便利である。これにより、(1.12)のように表すことができる。

QUANTMUFIELD-1-4.S1.12IM.PNG - 3,919BYTES

 

すると

 

QUANTMUFIELD-1-4.S1.13IM.PNG - 18,555BYTES

 

となる。従って、このような積分を(1.10)のすべての項について行い、最終的に逆フーリエ―変換すると、

 

   (r2,r1 ,ω)=0(r2 , r1 ,ω)+0(rA , r1 ,ω)P(A)0(r2,rA ,ω)+・・・         (1.14)

 

となる。このように、時間に依存する伝播関数についても、フーリエ―変換を用いることで式(1.1)と同じくらい簡単に表すことができる。さらに、数式と記号の変換表もフーリエ―変換による場合に書き換えることができ、表1.3のようになる。

 

QUANTMUFIELD-1-4.1.3IM.PNG - 20,018BYTES

 

QUANTMUFIELD-1-4.S1.15IM.PNG - 51,815BYTES

そして、(1.8)は(1.15)のように描かれる。


 

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