ダイアグラムの導入
ここからは、少し話を抽象化し、「ピン」を「散乱点」、「玉」を「粒子」、ピンボールゲームを「系」と呼ぶことにする。もし、抽象的で物理的イメージが掴みにくくなった場合には、図1.2.2に立ち返って考えてもらいたい。
さて、式(1.1)を簡単に理解するために、ダイアグラムを用いることにする。表1.1は、式(1.1)のような式をダイヤグラムに変換したり、逆にダイアグラムから数式に変換するための表である。
この変換表により、(1.1)をダイアグラムにすると、
となる。当然のことながら、式(1.1)と(1.2)は完全に等しい。しかしダイアグラムでは、粒子が散乱点の連なりから散乱を受けつつr1からr2に運動する様子が描かれており、数式よりも理解しやすい。
次に、P(r2,r1)の大きさを実際に計算してみよう。まず、
P(A)≠0
P(B)=P(C)=P(D)=P(E)=P(F)=0 (1.3)
のケースについて考えてみる。式(1.1)を使った場合は、
P(r2,r1)=P0(r2,r1)+P0(rA,r1)P(A)P0(r2,rA)+
P0(rA,r1)P(A)P0(rA,rA)P(A)P0(r2,rA)+
P0(rA,r1)P(A)P0(rA,rA)P(A)P0(rA,rA)P(A)P0(r2,rA)+・・・・
=P0(r2,r1)+P0(rA,r1)P(A)P0(r2,rA)
(P(A)P0(rA,rA))n
=P0(r2,r1)+P0(rA,r1)P(A)P0(r2,rA)/(1−P(A)P0(rA,rA)) (1.4)
式(1.2)と表1.1を用いて求めてみると、次のようになる。
次に、散乱の無い伝播関数が全て同じケース(P0(ri,rj)=c)について求めてみる。式(1.1)を使った場合は、
P(r2,r1)=c+c2(P(A)+P(B)+P(C)+P(D)+P(E)+P(F))
+c3(P(A)+P(B)+P(C)+P(D)+P(E)+P(F))2
+c4(P(A)+P(B)+P(C)+P(D)+P(E)+P(F))3+・・・・・・
=c/{1−c(P(A)+P(B)+P(C)+P(D)+P(E)+P(F))}
となる。
続いて、式(1.2)と表1.1を用いて求めてみる。
最後に少し変わったケースとして、
P(A)=P(B)=P(C)=P(D)=P(E)=P(F)≦1/10
P0(r2,r1)≒1/2 (1.7)
について求めてみる。この場合は、散乱は多くても1回程度しか起こらないため、
P(r2,r1)≒P0(r2,r1)+P0(rA,r1)P(A)P0(r2,rA)+P0(rB,r1)P(B)P0(r2,rB)
+P0(rC,r1)P(C)P0(r2,rC)+P0(rD,r1)P(D)P0(r2,rD)
+P0(rE ,r1)P(E)P0(r2,rE)+P0(rF,r1)P(F)P0(r2,rF)
となる。これは、1オーダーの近似計算であり、同様にして、散乱回数に応じて任意のオーダーの近似計算が可能となる。
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