シュレディンガー方程式からの証明

 

  古典的なピンボールゲームから出発して、そのアナロジーにより直感的に理解しやすい方法で伝播関数を説明して来たが、ここでこれまでの議論を裏付ける証明を与える。古典的ケースで、各経路を通る確率の和が伝播関数になるというのは、古典的伝播関数は伝播する確率を表していることから、確率の和の法則より明らかである。これまでの議論は、これを確率振幅にまで拡大適用し展開したものである。従って、この拡大適用が正しいものであったかが、明らかではないのなら議論は砂上の楼閣である。
 

 まず、伝播関数はシュレディンガー方程式のグリーン関数であるということを出発点とする。すなわち、ポテンシャルが無い場合については、

QUANTMUFIELD-1-8.1.40IM.PNG - 4,081BYTES

を満たす0である。ここで、0をフーリエー変換で

QUANTMUFIELD-1-8.1.41IM.PNG - 4,198BYTES

と与え、(1.40)に代入すると

QUANTMUFIELD-1-8.1.42IM.PNG - 3,730BYTES

となる。

 

  ここで、(1.41)の0を(1.42)に代入すると、(1.42)の解であり、0がシュレディンガー方程式のグリーン関数であることが証明される。(dθx dx=δ(x)及びf(x)δ(x)=f(0)δ(x)を用いる)

 同様にして、(1.29)のようなポテンシャル()がある場合のシュレディンガー方程式のグリーン関数を与えると、

QUANTMUFIELD-1-8.1.43IM.PNG - 3,803BYTES

となる。ここで (k)は、()のフーリエー変換である。この解は、積分方程式(1.44)となり、

QUANTMUFIELD-1-8.1.44IM.PNG - 4,045BYTES

(1.44)を(1.43)に代入し、(1.42)を用いると

QUANTMUFIELD-1-8.1.45IM.PNG - 6,300BYTES (1.45)

となる。これは、(1.34)と同じ結果である。

 これにより、ピンボールゲームのアナロジーから摂動展開により求めた伝播関数と、シュレディンガー方程式から求めた伝播関数が一致することが証明された。逆に言えば、シュレディンガー方程式から数学的に伝播関数を求めた場合、その物理的イメージはピンボールゲームのようなものであり、散乱体に散乱されなかった場合、1回散乱された場合、2回散乱された場合、3回散乱された場合、・・・・の確率振幅の和となっていることが理解できる。

 

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